2010年7月24日土曜日

インタビュー24

久しぶりにですが、偉大なるファンサイト様が残された貴重な遺産を訳しました

このインタビューは1983年の7月3日にSarasota Herald Tribuneという新聞に掲載されたものです
Asolo's Knepper challenged by 'raw, exciting role'

ネッパーさんは当時23歳…
このときはまだ“俺は映画やテレビなんかに出ねぇ!”とツッパってらした時期で、
名前もロブ・ネッパーだったときです

で、このインタビューはアゾロ・ステート・シアターで1983年7月8日から上演された舞台、「Dark of the Moon」に関してのインタビューです
この舞台でネッパーさんは主役の魔法使いの少年、ジョンを演じています
魔法使いの少年と聞いて、ものすごくメルヘンな印象を持たれたそこのアナタ、そのイメージはちょっと横に除けて下さい
ストーリーは大体こういうものです

“Dark of the Moonはジョンとバーバラを中心に展開します。
魔法使いのジョンは、バーバラという人間と恋に落ちます。彼は彼女と結婚するために、どうしても人間になりたいと願います。その願いは女性の魔術師によって聞き入れられます。
もしバーバラが1年間ジョンを裏切らなければ彼はずっと人間として生きられるだろう。

バーバラの住んでいる町の人々はジョンが魔法使いであることを知ると彼を猛烈に嫌い、ジョンはもと住んでいた山に帰らなければならなくなります。町の人々はバーバラを魔力から守るために集会を開き、そこで彼女は別の求婚者によって乱暴されてしまいます。

バーバラはジョンを探しに山へ行き、そこで魔女と魔術師が取引したことを知ります。ジョンがまだ人間になりたいのなら、彼らはバーバラを殺すかもしれない。そして(約束を守れなかったことを)ジョンの失敗だと思い込んでいる。互いは戦い、最後にバーバラは死に、ジョンも彼女のかたわらに… 魔法使いに戻ったままで。”

ストーリーはココを参考にしました(少し端折りました)
Dark of the Moon (Sarasota, 1983)
*文中に出てくるConjurとwitchとは同じ「魔法使い」という意味ですが、人物関係を区別するためにあえてConjurを「魔術師」としました

出だしは人魚姫に似てるなと思ったのですが、ものすごくダークな展開に…
ジョンのラストはたぶんお亡くなりかと(つД`)
悲しい話です
このストーリーを踏まえて、後のインタビューを読んでいただければありがたいです

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俳優ロブ・ネッパーはDark of the Moonの切迫したシーンの演技を始めるところです。しかしアゾロ・リハーサルホールの隅に立っている姿は、大事な試合に向けてトレーニングをしているアスリートのように見えます。
このシーンに他のキャストが加わる前に、ネッパーは素早くストレッチをしたり、1~2分間つま先で力強く跳ねたり、棚の出っ張った部分での懸垂をやり終えました。
トレーニングはこの役のために特に必要で役に立った。とネッパーは後に話しました。

Dark of the Moonでネッパーはバーバラ・アレンという美しい少女と結婚するために人間に変身した、魔法使いの少年ジョンを演じます。
この役はひどく疲れさせ、肉体的にも特にキツイものです。上演の間もジョンはバーバラへの愛と、決して断ち切れない不気味な世界からの誘惑との間で感情が揺れ続けます。そして保守的な町の人々の高まったフラストレーションと直面し、混乱します。
「すごくカッコ良くて刺激的な役なんだ」とネッパーは話します。
「最近何人か知的な人物を演じてるけど、彼らは一歩引いた視点で鋭いコメントをする… でもジョンは何もかも本能からなんだ。筋肉も骨も神経もすべて。彼は手加減ということをしないし、怒るときも全力で怒りを爆発させる。だから前もってウォーミングアップして、あらゆる筋肉の活動を自分の体に気づかせるんだ。この役は頭で考えちゃダメだ。理屈っぽく言うと、リハーサルで“もうジョンのダークな部分を出すことができない!”なんてことがあってはいけないし、町の人を怖がらせたままでもいけないんだ」

監督のシェルドン・エップス*1はジョンという役を役者にとって、とてつもないチャレンジだと言います。ジョンは対立する2つの世界を橋渡しする役割があるからです。
「ジョンが魔法使いから人間への変化するのをはっきりと見て取ることができて、そのうえ彼が人間として存在している間にも、ほんの少し魔法使いとしての本性を表さなければならない」エップスは話します。
「魔法使いとしての彼の表現方法は役者とダンサーの両方のスキルが必要だと言ってもいい。それがこんな大変な時期にこの役をキャスティングした理由なんだ。ロブが我々のオーディションを受けるまでにたくさんの人を見たけれど、誰も彼のようにこの役をこなせる者はいなかった。彼は破天荒で危険で、非常に才能のある役者だ」

ネッパーはそのような賛辞を軽くあしらうと、エップスのもとで考え出された“強いチームワークがもたらす効果”について話します。彼はバーバラを演じるグレチェン・ロードの働きぶりを特に喜んでいます。
「彼女は素晴らしいよ。いくつかのシーンで彼女と一緒だけど、俺は思わず、ただ突っ立ってビックリしてるところだった」そう言って笑います。
「彼女はとても自分自身に対して厳しいんだ。そして俺に対しても正直であろうとする。いくつかの芝居に関わってきたけれど、みんな休憩があったら自分のことをするだろう?でも彼女はあるシーンの後で“そんなの信じられない”って堂々と言ったんだ。みんなでそのシーンについて話し合うべきだって。*2演技の基礎に返ったようで、俺にとって大事なことだった。-素直でいること、そして動機を探ること」

ネッパーは(この作品の初日には24歳になります)オハイオの小さな町の出身です。彼は9歳のときに上手くおだてられて夏の演劇プログラムに参加してから、ずっと劇場に関わってきました。
「俺はシャイな子供で、プログラムに登録しに行ったときに他のメンバーを見たらビビってしまって…」彼は思い出します。
「木に登って高いところから他のみんなを見ていたら、インストラクターが俺を見つけてさ、下に降りてグループに入ってみないかって聞いてきたんだ」
ネッパーは青春時代の多くを、獣医としてのキャリアを積んで父親の跡を継ぐつもりでいました。しかし高校生のときに、演じることが自分の趣味の領域を超えたものになっていることに気づきました。

彼はノースウェスタン大学で演劇を学んだ後、シカゴでいくつかの作品に出演しています。グッドマン・シアターでのデヴィッド・マメット脚本のLakeboat、ツアーで行われたThe Life and Adventures of Nicholas Nicklebyの後、今年初めに彼はニューヨークに引っ越しました。そしてすぐにアゾロ・ステート・シアターにキャスティングされます。この夏、彼はこの劇場が製作するSherlock Holmesのアルフ・バシック役(モリアーティ教授の狡猾で魅力的で残忍な助手)でも出演しています。

彼はDark of the Moonの役作りの間に、自分の今までの人生から多くの経験を引き出したと言います。
「俺たちは怖いほど似ている」
俳優とは、はかない生き方です。例えば見知らぬものが新しい町にいると、時には軽はずみな判断と誤解の犠牲者になる。それがどういうものなのかネッパーは知っています。
「固定概念にはまっている一部の人は、俳優って舞台に立っていなくても常に演技しているものだって思ってるだろ?例えばの話、女の子とデートしてるときに、俺が本気かどうかどうすれば分かる?なんて聞かれるとガッカリするんだ」
今もネッパーはジョンが魔法使いと人間の領域を行ったり来たりして混乱しているのと同様の経験をしています。
「俺がサラソタに着いたとき、ジョンが経験しただろう新しい世界を俺も感じたんだ。ここは何もかもが生きいきしていて美しい。ペリカンやヤシの木なんてこれまで見たことがなかったんだ。すごく癒されるよ。でもジョンが自分の残してきた世界に引かれるように、俺もニューヨークの興奮や喧騒が恋しくなるときもある」
Dark of the Moonの敵対的な町の人々の反応は、ネッパーの記憶を呼び起こします。
「彼らの考え方は、オハイオにいる親類を思い出すんだ」彼は話します。
「俺は小さな町で育ったんだけれど、親類の多くは農業をやっていて同じ価値観を共有している。この作品に出てくる人たちと同じように。彼らは信心深いし、よく働くし…でも閉鎖的で自分と異なるものを受け入れない。彼らは独立心やそれに伴う行動を良くは思わなかった」
「多くの若い人と同じように、俺も反抗期は彼らや彼らが持ってる価値観を受け入れられなかった。もっと開放的な都会に出たがってた。後にもっと親戚を客観的に見るようになって、彼らの理由が分かったし、俺を守るためにしつけてくれたことだと感謝しているよ」
彼はかなり楽に、ジョンという役に同化することができたわけです。ネッパーはリハーサルの段階で彼のキャラクターに少しおびえていたと言います。
「ジョンはとても力強くて繊細で、活気にあふれている。時々リハーサルで、俺はつまらない人間だったんじゃないか?と考えてしまうんだ」
「するとそれを自分で強引に補おうとする。だからくたくたに消耗してしまう」
「もちろん最後には自分自身が何をしてもOKだと思えるところへ到達しないといけない。それは刺激的で危なくて、ある意味では素晴らしくて楽しいものだろうね」



*1 監督のシェルドン・エップスさんは舞台だけでなく、
その後「フレンズ」やそのスピンオフの「ジョーイ」や
「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ」の監督もされているようです
Sheldon Epps(imdb)

*2 “みんなでそのシーンについて話し合うべきだ”という話が出てきますが、
演技のレッスンの中では誰かがみんなの前で演じてみせた後、
残りのメンバーがそれについてどう感じたか話し合う、ということがされます
その後に続く“演技の基礎に返った”という言葉はその時のことを思い出したということでしょう



やはり演劇青年っぽい感じかな?
オハイオの小さな町出身だということへの気概というか、負けん気みたいなものも感じます
でも意外なほど、根っこの部分は今とあんまり変わらないんですね(笑)
若いお兄ちゃんなんだから、訳の口調を変えようかと思いましたが、そんな必要は全然ありませんでした
自分の事をシャイだと話してますが、今でもそのまんまですね

“例えばの話”ということわりを入れてるけれど、
やっぱり俳優の仕事をしてると付き合ってる女性から、マジなのかどうか聞かれることがあるのかも
あれだけ演技が上手かったら、聞いてみたくなる女性の気持ちも分からんでもないような(笑)

別のこの記事では
Staging, direction make Asolo play effective

この作品のレビューが書かれていて、
“ロブ・ネッパー演じるジョンはダンサーの優美さを持ち、別世界(魔法使いの世界)そのものだ。きわめて邪悪な存在だが、愛のために人間になろうと全力を尽くす…”
と書かれています

「ダンサーの優美さ…」
う~ん、こういうの読むと
ネッパーさんが舞台に立ってるのを見てみたかったです

4 件のコメント:

  1. この長い記事を訳すのは、たいへんっだったのでは?

    >でも意外なほど、根っこの部分は今とあんまり変わらないんですね

    ですね。読んでいて何回もそう思いました。
    いやあ・・・細かいこと細かいこと。

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  2. bancodesrtさん

    この長~い記事を読んでいただき、ありがとうございます
    まずはそれをお伝えしたかった(笑)

    実は一ヶ所自信のない部分はありますが(コラ!)
    ネッパーさんの言いたいことはきっと伝わる…はず

    役へのアプローチというか、入り込み方が
    今とほとんど変わらない!
    そのことに一番ビックリしました
    27年以上も前からこの独特のやり方だったんですね
    確かにめちゃくちゃ細かいです

    もしネッパーさんが
    PBのオーディションでT-bag役をつかめなかったら、
    今頃はUCLAで演技を教えていたかもしれないわけで、
    学生たちに教えるかもしれなかった、
    そのセオリーというか方法論をすごく知りたくなりました
    俳優を辞められても大いに困るので、
    代わりにそういう本とか書いてくれないかな(笑)

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  3. ネッパーさんは本当に演じる事が大好きなんですね。
    その情熱が今も変わらず続いているなんて
    素晴らしい事だと思います。

    トレーニングもそうですが、アスリート並の集中力で役に
    入ってくんだろなぁ~……ふぉわんふぉわん……
    と想像すると、その瞬間に立ち会ってみたいような
    気がします(笑)

    人魚姫っぽいような古典ホラーっぽいような
    ストーリーも面白そうですね。

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  4. 玉子酒さん

    自分で見てもつくづく長い記事ですね(笑)
    読んでくださって、ありがとうございます

    27年前といえば、
    私はまだズルズルに鼻を垂らしたガキだったんですよね(笑)
    ネッパーさんの演技の一体何に、私はこんなにもひきつけられるんだろう?
    なんて考えてみたって、そりゃ分からないハズですよ(笑)

    ドラマの舞台裏の映像を見ても、
    そのカメラに映ってる状態で、すでに役に入ってるので、
    本当はもうちょっと前を知りたいんですよね
    素と役柄のスイッチが切り替わる瞬間を見てみたい!(・∀・)

    この作品はひょっとしたら人魚姫以外にも、
    この影響を受けているかもしれないです
    ジロドゥの『オンディーヌ』 http://bit.ly/bwD2m3
    (日本のWikipediaのページです)
    人間と異世界の者との関わりは、いつだって永遠のテーマですよね

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